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‘美術館や博物館・museum’ カテゴリーのアーカイブ

透ける箱/Kunsthaus Bregenz

2009 年 1 月 8 日 木曜日

霧にけむる湖畔のBregenz駅に降り立つと、行く手に目指す建築が見えました。伝統的な石やレンガの町並みの中にはめ込まれた、不思議な透光性を持つ箱。曇り空とガラスの境界があいまいにかすむ。近づくと、中に構造を隠し持つ皮膜がだんだんと見えてきます。ピーター・ズントーの建築を訪ねるのはこのKunsthausが初めてです。

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晴れ間が見えたり、視点の角度を変えると、ガラスが空を映し立体感を持ち、中にある躯体の存在が見えなくなります。夏の日差しや晴れた日なら、遠景でも光を反射してすっきりと矩形なのだろうと想像する。

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建物の中に入ると、内側からはもっとはっきり「光の箱」でした。地上階は壁面からの光をたっぷり受けた天井の高い空間、2階と4階は天井ガラスの上にある照明と壁面からの外光の両方をガラスで受けて展示場に光を拡散する空間。3階だけは、ほぼすべて人工的な光で制御された空間。

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各階と階段を行ったり来たりして、日暮れの頃の外光と照明のつくりだす変化の中に身を置いてみた。だんだんと外光が弱まり、宵の青い色に変わっていく。そして皮膜の中、フロアの下あたりに埋め込まれたスポットからの光がはっきりと影を作り始める。この40分ぐらいが、この建築をいちばん楽しめる時間だったのではないかと思います。ちょうどやっていたベルギーのアーティスト、ヤン・ファーブルの展示はわたしは好きではなかったけれど、2時間のあいだ建物のなかをゆっくりと歩きまわり、ベンチに腰掛け、階段を上がったり降りたりして飽きることはありませんでした。室内の光は決して展示を邪魔するような光ではなく、ほんわかやんわりと床に届く光。微妙なグラデーションを見せる天井の存在はわたしにとっては圧倒的でした。

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日が暮れると、外から見た建築の表情が全く違っていました。建築を夜の闇に浮かび上がらせているのは演出された光ではなく、展示品を照らす照明が外に漏れているもの。昼間に外光を拡散して室内に導いていた皮膜が、今度は中の出来ごとをやんわりと外に伝える。

もっともっと眺めていたかったけれど、気温がマイナス5度だったので、写真を撮る手が凍える前に帰路につきました。

***

スイスとオーストリアの国境にある小国リヒテンシュタインで、国立大学の建築科の学生にオランダやフランスからの交換留学生を交えた一週間のワークショップをやっています。テーマは「Light Made Tactile」。空間の中で光を感じ、増幅させ、そこで発見した「効果」を他の人と分かち合うための装置を作る課題。このKunsthaus Bregenzの訪問は、このテーマの延長でもあります。

大好きな場所

2008 年 9 月 12 日 金曜日

8月の末にAXISでフォーラムをやった時に出会ったデザイナーのひとりに「イギリスを観光するなら、外せない場所は?」と訊かれたのですが、その時に「design-hugのブログで書くから」と答えてから2週間以上経ちますね。すでに旅立ってしまったでしょうか?イギリスでもこれを読めていることを祈って。

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Kettle’s Yard。ケンブリッジの中心街から少しだけ北にあるアートギャラリーの隣に、1930年代にテート・ギャラリーのキュレーターだった夫妻の住まいとアートコレクションが残っていて、それが一般公開されています。わたしはここが大好きで、これは英国の宝だと思っています。

入り口は見逃してしまうほど素っ気ない小さなドアで、ぶら下がっているリングを引っ張ると係の人がドアを開けてくれます。 まず迎えてくれるのはカンディンスキーの版画。そして、夫妻が何十年もの年月をかけて集めたというビーチで拾った「限りなく球に近い石」たち。小さな彫刻と庭の花と、貝殻やガラス玉と一緒に明るい窓辺に飾られています。もうここで、ため息が。

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トイレと洗面台の間にベン・ニコルソンの版画。 階段下の小さな空間にピアノがあり、その上にはさりげなくぽつっと、ブランクーシ。。。

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コーンウォールの風景画家ブライアン・ピアースがたくさんコレクションされ、ロジャー・ヒルトン、バーバラ・ヘップワース、ナウム・ガボ、ヘンリー・ムーア、ルーシー・リー。

小さなコッテージ3棟を繋げて改築し、1930年代後半のモダン様式でギャラリーとライブラリーを加えた住まいに、そのコレクションと小石や植物の種、金属の破片、ヴィクトリアンのガラス器、ナヴァホの織物などが一緒に飾られている。好きな人だったら、宝探しのような訪問になると思います。

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この住まいとアートコレクションが、当時の什器そのままケンブリッジ大学に寄贈され無料で公開されているという、そのスピリットおおらかさ。インテリアを撮影したい人は3ポンドを払い入り口で許可を得ますが、「本当に3ポンドでいいんでしょうか?」といつも思います。何度行っても「帰りたくない、ここに泊まりたい。」と思う場所なのです。

Have a good journey.

バーバラ・ヘップワースのアトリエ

2008 年 6 月 2 日 月曜日

前回の河井寛次郎記念館のことを書いていて、この春に訪れたバーバラ・ヘップワースのアトリエを思い出したので、続けて紹介します。

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なんといっても、庭。「Museum & Garden 」と呼ばれているくらいなので。手が入っているけど、よい感じに自然味の残された庭。そこに彼女の作品が点々と置かれています。母屋から、一旦庭に出てアトリエに入る。

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ここは「思索室」。河井邸での庭を眺める茶室にも通じる、光溢れる温室。

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こちらは制作室。扱う素材もさまざまだったので、かなり広い。石彫のコーナー、石膏や粘土の場所、それを鋳型にする作業机など。ここも天窓から光がさんさんと入る。使われている道具や物の置き方など、乱雑な中にも美意識が徹底しているアトリエ。

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エントランスの上の階、母屋の一角にあるサロン。小さめの作品を置くギャラリーでもある。元夫で2人の娘の父だったベン・ニコルソンの作品が掛かっていたり。

住まいとアトリエの適度な距離感、表通りからはほとんど何も中の様子をうかがえない素っ気ないほどのたたずまい、中に入ると気持ちよく広がる庭と手作業で作られたり集められたりしたお気に入りの物たち。そんな場所を、家もアトリエも庭も、長い時間をかけて丁寧に作っていったのだなあ、と想像する。数々の作品の背景に、この楽しくも地道な作業も隠れていたことに思いを巡らせる。こんなに心惹かれるのは、それがわたしのやりたい事だからですね、きっと。

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この奥に、あの庭が広がるとは想像もできない入り口。Tate St. Ivesの別館として公開されています。この夏にはバーナード・リーチのアトリエも公開になるそうです。 http://www.tate.org.uk/stives/hepworth
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アトリエを出て5、6分歩くと海辺に出る。こんな風景を間近に見ながら制作していたなんて、、、いいなあ。

河井寛次郎記念館

2008 年 5 月 29 日 木曜日

新緑の京都で「河井寛次郎記念館」を訪れました。

表からは京都の町家に見えるけれど、中は深く広く、住居とスタジオと作業のための中庭と、素焼き用の竃、そして奥の傾斜に沿って登り竃がある。氏が当時仕事をして家族が暮らしていた様子そのままに保存してある貴重な場所です。

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住まいと仕事場を心地よく区切る中庭。そして迫力の登り竃。手前から2番目の室から、数多くの作品が生まれたそうです。

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素焼きされた陶器に釉薬をかける作業をしたスタジオ前の中庭。並んだ壷の中に釉薬。

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住居部は飛騨の合掌造りの内部を思わせる、吹き抜けのあるどっしりした空間。建具や家具のディテールに民芸の重量感と京都の繊細さが同時に息づいている。

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実は大学院生だった14年前に一度行っているのだけど、ほとんど印象に残っていなかった。今回あまりに感銘を受けたので「すでに28才にもなっていたわたしは、どうしてこの良さが分からなかったんだろう?」と呆れたり。たぶん、「暮らす」ことと「仕事をする」ことが一緒になっているこの心地よさを、建物の細部まで気を配ったこの住まいの暖かさを、理解してなかったのですね。若かった、、、。

河井寛次郎や浜田庄司の重厚な陶器があまり好みでない、というのは今でも正直なところなのですが、今回の訪問でそういう作品や民芸の運動の後ろにある、日々の生活を大切にする彼らの思想に触れました。バーバラ・ヘップワースのスタジオと自邸、仕事場と融合した庭などを見て受けた印象と、似ている気がします。

V&AとMusée Le Secq des Tournelles

2008 年 5 月 1 日 木曜日

サウス・ケンジントンにあるVictoria & Albert Museumの2階にWrought Iron(錬鉄、または鍛鉄)のコーナーがあります。とても好きな場所。

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鉄で出来た門扉とか窓の飾りは、もともとは防犯のためだったと思うけど、なんというか優雅な実用装飾ですよね。昔のものはまた、ざらっと錆びているような表面のテクスチャーが美しい。

街で見かけるこういう装飾もいいけど、こうやって美術館の一画に並ぶと、工芸品としての美しさが見えてくる。ここに来ると、どうしてこんなに落ち着くのかなぁ。

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このV&Aの鉄コーナーが好きな人には、もう一カ所おすすめの場所が。フランスのノルマンディー地方の首都ルーアンにある、Musée Le Secq des Tournellesにぜひ、行ってみてください。すごいよ。4世紀から19世紀までの鉄製品が12000点集められた博物館です。特に鍵のコレクションが素晴らしい。

わたしはここでは、あまりの数の展示品に落ち着きをなくし、わーわー言いながら、コルク栓抜きとか折りたたみのカトラリーとかを丸一日かけて眺めました。

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本文のおわりです。

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